「自然農をやってみたいけれど、畑も庭もないから」——そう言われることが、よくあります。
でも、僕はいつも思うのです。自然農は、特別な人のためのものじゃない。畑がなくても、庭がなくても、ベランダに置いた、たったひとつのプランターから始められる。それを日本中に伝えることが、僕の夢でもあります。
前回、「市販の野菜は出荷基準でつくられている」「結局は、誰がどう作ったかという信用の問題だ」という話を書きました。その問いへの、いちばん確実な答えがあります。自分のベランダで、自分の手で育てること。今日はその「最初の一鉢」の話を。
なぜ、最初の一鉢がホーリーバジルなのか
正直に言うと、ミニトマトもいいのです。でも、もし「いちばん失敗しにくい一鉢を」と聞かれたら、僕は今、ホーリーバジルをすすめます。
丈夫で、虫がつきにくい。香りが強く、育てる喜びがすぐに返ってくる。そして摘んだその日から、お茶にも料理にも使える。暮らしに、まっすぐつながる一鉢です。
ホーリーバジルは、インドで「トゥルシー」と呼ばれる聖なる薬草です。その効能は一冊の本になるほどとも言われ、かの地では「奇跡のハーブ」とまで称えられてきました。家の戸口や寺院のそばに植えられ、長く敬われてきた植物です。育てているだけで、どこか背筋が伸びるような、そんなハーブなのです。
7月からでも、間に合います
「でも、もう7月。今から種をまいても遅いのでは?」——そう思いますよね。
大丈夫です。ホーリーバジルは、暑さに向かうこの季節こそ得意な、熱帯生まれのハーブ。むしろ夏の高温で、発芽も生育もぐんと進みます。今からまいても、夏から秋にかけて、じゅうぶん香りを楽しめます。
正直にお伝えすると、春まきの株に比べれば、背丈は控えめになります。寒さに弱いので、秋が深まると終わっていく。けれど、それでいいのです。大きく育てることがゴールではなく、ひと夏、自分の手で命を育てる時間そのものが、この一鉢の贈りものなのですから。急がない。これは、自然農がいちばん最初に教えてくれたことでもあります。
種から、ゆっくりと
僕自身は、このホーリーバジルを今年、種から育てています。
四月にまいて——いま、やっと3センチほど。肥料をやらない自然農では、植物は自分の力でゆっくり育ちます。急かさない分、根の張りも、香りも、確かなものになっていく。そして先日、育ってきた苗を一本ずつ、ひとつのポットに植え替えました。小さな引っ越しです。
ここからが、自然農でプランターを育てるときの勘どころです。
まず、土のこと。市販の培養土には化学肥料が混ぜられていることが多いので、僕は気をつけています。代わりに、使い終わったコーヒーかすや枯れ葉を、土の上にそっと乗せていく。それが土の中の微生物を育て、肥料に頼らなくても、植物が自分で育つ力を引き出してくれます。
水やりは、土の表面が乾いたら、たっぷりと。これからの暑い季節は、朝か夕方の涼しい時間にあげると、根に負担がかかりません。
そして、いちばん大事なこと。虫を防ごうとして、つい栄養を足したくなりますが——それは逆です。以前、肥料をやりすぎた万願寺トウガラシに、カメムシが群がった話を書きました。植物は、与えすぎるとかえって弱り、弱った植物にこそ虫は寄ってくる。だから、足さない。もともと虫に強いホーリーバジルなら、無理をさせずに育てるだけで、なおさら元気でいてくれます。自然農では、手をかけすぎないことが、いちばんの手当てなのです。
ひとつの鉢が、暮らしを変える
やがて葉が茂ったら、摘んで、お茶にしてみてください。お湯を注いだ瞬間に立ちのぼる香りを、ゆっくり吸い込む。それだけで、忙しかった一日の何かが、すっとほどけていきます。
ベランダに置いた、たったひとつの鉢。そこから芽吹いた小さな命を、毎朝のぞきこむ。「今日はどのくらい育ったかな」と。その時間が、暮らしに静かなリズムを連れてきてくれます。
聖なるハーブが教えてくれるのは、たぶん、そう難しいことではありません。急がなくていい。手をかけすぎなくていい。命は、そっと見守るほど、よく育つ——畑でも、ベランダでも、そしてきっと、人も。
その最初の一鉢を、よかったら一緒に育てましょう。ホーリーバジルは固定種なので、上手に育てれば、秋にはあなたの手で種を採り、また翌年へつなぐこともできます。そうして、いのちはつながっていきます。
---
[購読者さま限定|先着50名さまへ、種のおすそ分け]
この記事を読んで「育ててみたい」と思ってくださった購読者の方へ。固定種のホーリーバジルの種(たねの森さんの種です)を、おひとり10粒ずつ、先着50名さまにおすそ分けします。送料は当方が負担します。ご希望の方は、下のフォームからお申し込みください。
▶︎ お申し込みはこちら:[https://form.jotform.com/261778352320053](https://form.jotform.com/261778352320053)
いのちがつながる最初のひと粒を、あなたのベランダへ。


