いま、私の畑の脇に並べた育苗のポットとパレットで、小さな苗たちが育っている。
そら豆、ひよこ豆、赤タマネギ、それにいくつかのハーブ。どれも、9月から10月にかけて種を蒔いたものだ。
並べて眺めると、同じ「芽」でも、驚くほど姿が違う。そら豆は、厚みのある丸い葉を、手のひらを広げるように開いている。ひよこ豆は、細かなギザギザの小さな葉が、鳥の羽のように左右に並ぶ。赤タマネギは、糸のように細い芽の先に、まだ黒い種の殻をかぶったままだ。ハーブは、ようやく双葉を開いたところ。
種の袋の中では、どれもただの小さな粒だった。それが土に入り、水を得て、それぞれが自分の形を思い出したかのように、ちがう葉を広げていく。毎朝のぞくたびに、少しずつ姿が変わっている。
ポットやパレットを並べたすぐ横には、広葉樹の木が一本ある。この季節になると、黄色い落ち葉が、苗のあいだにはらはらと舞い落ちてくる。第1章で、森の土は落ち葉が積もって肥えていく、と書いた。小さなポットやパレットの上にも、その森の景色が、小さく重なって見える。
今回は、この「育苗(いくびょう)」の話をしたい。
ただ、先に正直に言っておく。“写真の野菜たちは、プランターで育てるなら、育苗しなくていい。直まきで、ちゃんと育つ。”第2回で「プランターなら直まきがいちばんシンプル」と書いたのは、そのとおりだ。
それでも、あえて今回、畑の育苗を見てもらうのには理由がある。“なぜ農家は育苗するのか”を知ると、種との付き合い方が、一段深く見えてくるからだ。そしてもう一つ。この野菜たちは、来年の秋、あなたのプランターに迎えられる野菜でもある。今回は、その予習の回でもある。







