『固定種のタネが、妖精の羽音に変わるまで』
— “Too Beautiful to Reap” の原点
ようこそ、私の楽園へ。写真家の西口吉宏です。
19歳から写真を始め、最初の頃は家族(祖母)や友人、自分の子どもが生まれてからは子どものポートレートをファインダーに収めてきました。
そんな僕が今、日々の暮らしの中で実践している『自然農』の畑から、新しい表現を始めています。
それが、写真とAIを同期させる『プロンプトグラフィー』です。
なぜ、カメラを手にしてきた私がAIを使うのか。最初の記事として、その理由と、この世界観の原点にある物語を綴りたいと思います。
◆ 始まりは、27年前の記憶と、祖母の畑
僕の畑では、農薬も肥料も使いません。自家採種した固定種のタネを、そっと土に託すだけです。
僕は27年前に生まれてきた息子がアトピーだった事から、自分で無農薬栽培をはじめるようになったのです。兼業農家の長男として生まれ、幼い頃に祖母に畑に連れて行ってもらい、夏の暑い日には桃やトマトなどその場で採ってかぶりつきました。その時の味覚は60歳を過ぎても忘れることが出来ないものです。その体験は僕が今、自然農にこだわって実践している原点ともなったのです。
無農薬栽培と言っても有機農法と違い、自然のまま栽培していきます。
天候などにかなり影響を受けますが、野山に生えている薬草と同じように、野菜たちは自らの生命力で成長していきます。そうすることで野菜の本来の味が出るのです。古来より続けて来た自給自足の営みなんです。
雑草も虫たちも、すべてが調和して生きるその場所は、自然のリズムで時が進みます。人間のコントロールを超えた『野生の楽園』。その場所にいるだけで気持ちが良いんです。
◆ 一期一会の収穫と、溢れる愛おしさ
自然との共存の生き方をしていると、野生の鹿、イノシシ、猿がやってきます。それも仕方が無いことですが、被害を受けることもあれば、猛暑で日照りが続き夏野菜が生育していかないこともありました。実際に、野菜を収穫出来る事は当たり前ではなく、一期一会なのです。
また、無肥料で育てると痩せた土地では通常より時間がかかります。種まきから収穫まで10ヶ月かかることもあります。そんな大地の恵みを授かり、いざ収穫を終えたとき、私は胸の奥から溢れるような感情に包まれました。
あまりにも野菜たちが綺麗すぎる。
自然界の色ってこんなに綺麗なんだ。といつも感激してしまうほどです。それは、食べるのも、売るのも躊躇ってしまう(ためらってしまう)ほどの、切ないほどの愛おしさが湧いてくるのです。
“Too Beautiful to Reap”
— 収穫するには、あまりにも美しすぎる。





◆ 写せなかった世界を、AI(デジタル暗室)で現出させる
僕は野菜や自然農の畑の写真をいっぱい撮っても、他者にはただの野菜の写真・草だらけの畑の写真にしか見られなかったのです。
この溢れるような愛おしさを形にしたい。そう願ったとき、私の脳内に現れたのは、野菜たちと共に生きる小さな精霊(妖精)たちの姿でした。
僕は2025年3月からAIアートを師匠から学びはじめ、毎日アート作品を作り続けました。まず、最初に壁にぶち当たりました。それはAIが記憶している世界の美の平均値から出てくる絵です。見た目は綺麗な絵が誰でも出てくるのはその性です。そこから、オリジナリティ性の高い作品の生み出し方を試行錯誤し始めたのです。
そのためにはMidjourney のデジタル暗室に入り、数千回もの選択を繰り返して、AIに私の『美意識』を記憶させました。これはパーソナライズすると言います。
私が45年間のキャリアの中で美しいと感じてきた、クラシカルな光、影の深さ、植物の乾いた皮膚の質感。仮にプロンプトをコピーしても同じ作品には仕上がりません。
そして、ついに僕の見える世界観を表現する事が出来たのです。僕の感性と同期したAI(パーソナライズ)は、まるで僕が現地でファインダーを覗き、奇跡の瞬間をスナップしたかのような、圧倒的な写真的リアリティを持って、脳内の楽園を現出させてくれたのです。



◆ “すべては愛で出来ている”
自然農の土の上で学んだ真理。それは、“すべては愛で出来ている” ということです。
泥にままみれた現実の美しさと、AIというテクノロジーが融合したとき、言葉を超えた命の物語が生まれました。僕はこのテーマを、これから生涯をかけて追求していきたいと思っています。
プロンプトグラフィーはまだまだこれからの表現方法ですが、カメラで撮すことが出来ない世界観を表現して行きたい人がいればワークショップを開いたり、いつかこの世界を1冊の写真集として皆様の両手に届けることを目標にしています。
あなたの胸の奥にある楽園の記憶にも、この光が届きますように。
2026年5月 西口吉宏


