『AIっぽさを消す魔法』
— Midjourney V8.1を自分だけの「専用カメラ」に変える方法
前回の記事を読んでくださり、本当にありがとうございました。
僕の作品を見た方から『どうやってAIでこの空気感を出しているのか』と聞かれることがあります。AIアートと聞くと、多くの人は『プロンプトを打ち込めば、誰でも同じ綺麗な絵が出る』と思いがちです。
しかし、それは半分正解で、半分は間違いです。
誰でも出せる絵は、AIの美の平均値に過ぎません。そこから一歩踏み込み、オリジナル性をどこまで追求するか。
ここで勘違いして欲しくないのは、すべてをAIに作らせるのではなく、「自分で撮影した写真をベースにする」ということです。今回は、僕が日々籠もっているデジタル暗室の裏側をお話しします。


◆ V8.1の進化と、写真家が手綱を握る「スタイライズ」の数値
現在、僕が使用しているのはMidjourneyの最新バージョン『V8.1』です。この進化は、カメラで言えばダイナミックレンジ(光の階調)の劇的な向上や、大判センサーを搭載したようなテクスチャーの表現力を持っています。
ですが、そのままAIに描かせると、AIは親切心から『世間一般でウケそうな、過剰にドラマチックでツルツルした絵』を出してしまいます。それでは写真としてのリアリズムが死んでしまう。
もちろん、プロンプト内にカメラのメーカーや種類などを指定することも出来るのですが、やはり自分の写真を基本にするのです。オリジナル性を出す為には自分の写真が大切です。
その上で僕は、--stylize(様式化)という数値を徹底的にコントロールします。AIの余計な自己主張をあえて抑え込み、写真家として自分が意図した『純粋な構図』と『土の匂いがするドキュメンタリー性』だけを画面に残すための、ミリ単位の手綱引き。ここが最初の戦いです。


◆ 数千回の選択が生む、あなただけの「現像レシピ」
そして、プロンプトグラフィーの最大の核心が『パーソナライズ(--p)』です。
僕はMidjourneyのシステムの中で、提示される2枚の画像から『どちらがより私の美意識に近いか』を選び分けるランキングを、数千回以上繰り返しました。自分が64年間の人生で見つめてきた綺麗だという感性と、写真としての構図や光の入り方などの絵の作り方。それをAIのアルゴリズムに徹底的に記憶させたのです。これが本当に大切なポイントです。
今やデジタルなのでLightroomやPhotoshopなどで現像される方がほとんどですね。そこにもご存じのようにAIが導入されています。色味を変えたりするのは本当に簡単です。
かつて写真家たちが『コダックのフィルムにするか、フジにするか』を選び、暗室で現像液の温度や秒数にこだわったように、いま僕はデジタル上で自分だけの『現像レシピ(固有のコード)』を調合するように、自分が満足する設定になる点を探し続けたのです。
だからこそ、仮に誰かが私のプロンプトをそのままコピーして貼り付けたとしても、同じ光、同じ空気感の作品に仕上がることは絶対にありません。AIは完全に、僕という人間の感性と同期しているからです。特にMidjourneyは、パーソナライズをすればするほど良くなっていきます。
◆ 道具に魂を吹き込むのは、人間の記憶
テクノロジーがどれだけ進化しても、最後にそこに魂を吹き込むのは、人間側の『記憶』です。
僕の場合、それは幼い日に祖母の畑でかじりついたトマトの味であり、27年前の息子のために始めた無農薬栽培、今までの人生の中での愛おしさの記憶です。特に18歳までの記憶が、その後の生き方に大きく影響すると言われています。また見たくなる写真やアートには、この記憶や生き方がにじみ出てくるものだと感じています。
AIをただの自動生成ツールとして使うのではなく、自分の生き方や美学を同期させる新しい『カメラ』として扱い、カメラでは写せなかった脳内の世界を現出させる。
この『写真家の眼でAIを調教する基礎』を、近々始めるワークショップでも余すことなく伝えていきたいと思っています。
あなたなら、AIという名の新しいレンズで、どんな記憶を写しますか?
2026年5月 西口吉宏

