Yoshihiro Nishiguchi

Yoshihiro Nishiguchi

【自然農と暮らし】

ベランダではじめる自然農 ― 完全版

何を、いつ、どう蒔くか(第2回)

Yoshihiro Nishiguchiのアバター
Yoshihiro Nishiguchi
9月 26, 2026
∙ 有料

はじめに、この連載が、誰のためのものかを、もう一度だけ言っておきたい。

これは、“プランターで、自然農を味わう”ための記事だ。ただ野菜を収穫することが目的ではない。もし「とにかく手っ取り早く、たくさん野菜を採りたい」というのなら、正直に言って、この記事は向いていない。ホームセンターで肥料入りの土と苗を買い、教わったとおりに育てるほうが、早く、簡単に、実がなるだろう。

でも、この連載が伝えたいのは、そこではない。小さなプランターひとつの中に、自然のリズムを呼び込み、土が育ち、いのちが巡っていく――その営みを、自分の手で味わうこと。採れた野菜の一口に、“本当の味”を見つけること。収穫は、そのごほうびのようなものだ。そういう時間を、一緒に過ごしたい人に向けて、私はこれを書いている。

その心づもりで、読んでもらえたら嬉しい。では、はじめよう。


土ができた。では、何を蒔こうか。

ここが、いちばん楽しいところだ。でも、初心者がいちばん最初につまずくのも、実はここだ。“育てたい野菜”と“プランターで育てやすい野菜”は、必ずしも同じではない。そして、種には“蒔いていい時期”があって、そこを外すと、どれだけ土がよくても芽は出ない。

この章では、その二つ――“何を”と“いつ”を、はっきりさせておく。

野菜は、「いま蒔けるもの」から選ぶ

野菜選びのいちばんの基本は、“いま、この季節に蒔けるものを選ぶ”ということだ。どんなに育てたい野菜でも、蒔きどきを外せば芽は出ない。だからこの連載では、季節に沿って、いまから始められる順番で進めていく。

そして、土のことは、もう心配しなくていい。第2章で作った、あの土。それだけでいい。プランターひとつから始めれば、土は年ごとに、ひとりでに良くなっていく。だから“いい土ができるのを待ってから”ではなく、いまの土で蒔ける野菜から、始めればいい。

今から蒔くなら ― 絹さや豌豆

秋のいま、これから始める人に勧めたいのは、絹さや豌豆だ。11月に、プランターの土に直接、種を蒔く。これを“直まき”という。ポットで苗を育ててから植え替えるのではなく、育てる場所にそのまま蒔く、いちばんシンプルなやり方だ。蒔いたら、冬を越して、春に収穫する。

なぜ、絹さや豌豆なのか。理由がある。豆科の野菜は、根っこに“根粒菌”という菌を集める。この菌が、空気中の養分を土にとりこみ、土を豊かにしてくれる。つまり――絹さや豌豆を育てると、収穫できるだけでなく、育てたあとの土まで良くなる。第2章で話した“土は年々良くなる”を、いちばん最初の一鉢から後押ししてくれる野菜なのだ。始まりの一鉢に、これほどふさわしいものはない。

ここで、第2章の逆算を思い出してほしい。土は、蒔く2ヶ月前から仕込む。つまり、11月に蒔くなら、いま――9月の終わりごろ――から土を作りはじめれば、ちょうど間に合う。この記事を読んだいまが、まさに始めどきだ。

もっと手軽に始めたいなら

「豆はちょっとハードルが高そう」「もっと気軽に、すぐ試したい」――そういう超初心者の人には、二十日大根(ラディッシュ)、小松菜、ルッコラもいい。どれも育てやすく、しかも年中いつでも蒔けるので、思い立ったその日から始められる。名前のとおり、二十日大根は蒔いてから収穫までが早く、初めてでも“育つ手ごたえ”をすぐに味わえる。

まずはこの葉物・根菜で土に慣れてから、絹さや豌豆やミニトマトに進む――そんな入り方でも、まったく問題ない。大事なのは、完璧に始めることではなく、とにかく一鉢、始めてみることだ。


Userのアバター

このポストを、Yoshihiro Nishiguchiのご厚意で無料のまま読み進めることができます

または有料登録を購入する
© 2026 Yoshihiro Nishiguchi 西口吉宏 · プライバシー ∙ 利用規約 ∙ 回収に関するお知らせ
Substackを始めるAppを入手
Substackは、優れたカルチャーが集まる場所です